2020年4月15日 メルケル首相は語る:基本再生産数R0について
2020年4月15日ドイツ政府は長く続いたロックダウンの段階的解除を決定した。しかし、メルケル首相は、気を緩めるとどうなるかを「ロベルト・コッホ研究所;Robert Koch Institut」の感染症モデルに基づいてドイツ国民に次のように説明をした。
「ロベルト・コッホ研究所:Robert Koch Institut(英文)」は、結核のワクチンを開発したことで有名なロベルト・コッホによって1891年(明治24年)に王立プロイセン感染症研究所として設立された。ちなみに、慶應義塾大学医学部の創立者でもある北里柴三郎は、1885年(明治18年)ドイツのベルリン大学に当初は2年の予定で、最終的には6年間留学した。そこで、コッホ博士に師事し、破傷風菌の発見をはじめとする様々な業績をあげた。
写真はその時のドイツ語での国民への呼びかけである。クリックすれば、その時の映像を見ることができる。
映像の下に字幕が流れ、英語で翻訳をしたものがながれている。基本再生産数に関する部分の概要を日本語で下に示そう。
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(感染者数の)カーブが平坦になりました。私たちの健康システムに過大な負担をかけないように、カーブをフラットに維持する必要があります。
モデルからの観測値ですが、今の再生産数(R0)は1です。これは平均値ですが、1人が他の1人に感染させる数値です。これが
1人から1.1人になれば、10月までに医療崩壊が生じます。
1.2人になれば、つまりいまより20%多くの人が感染するようになると7月には医療システムの崩壊に、
1.3人になると6月に崩壊が生じます。
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ここで注目すべきことは、赤字で示したように、メルケル首相は、再生産数R0に言及をしその意味をわかりやすく説明している。この演説はドイツ国民の多大の共感をよんだようである。
「ドイツ日本研究所」が5月27日に行った、ドイツと日本のCOVID-19への政策対応の比較検討をおこなったオンラインフォーラム「National Approaches to Systemic Risk Germany and Japan under the COVID-19 Crisis」でドイツ側を代表して報告をおこなったリスクの研究者であるOrtwin Renn (scientific director at the Institute for Advanced Sustainability Studies (IASS) in Potsdam)氏は、メルケル首相は、コッホ研究所と新型コロナ感染症リスクに関してコッホ研究所と高度な連携のもとで政策決定を行ったと述べていた(発表時に用いられたパワーポイント資料はここから入手可能である)。
また、メルケル首相は、東ドイツ崩壊まで、東ドイツの科学アカデミーで理論物理学の研究を行っていた。感染症のモデルは、このブログの「感染症モデル入門(1)」でも説明するように、非線形の連立微分方程式を用いる。その最も有名なモデルの1つである「SRIモデル」は、科学における触媒の役割を記述モデルがその基礎になっている。メルケル首相は、1986年に博士論文を提出して博士号 (Dr. rer. nat.) を取得。そのご物理学者として分析化学にの研究をおこなったとのことである。あくまでも推測であるが、彼女にとっては、感染症モデルの理解は、アドバイザーの説明を聞いたのであろうが、容易であったに違いない。再生産数R_t の説明も、彼女の政治家としての説得力と彼女の物理学の素養をもった分析科学者としての知識の決勝であるかもしれない。
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