「Gain from loss」とは
「Gain from loss」という言葉は、次の論文
Shelor, R. M., Anderson, D. C., & Cross, M. L. (1992). Gaining from Loss: Property-Liability Insurer Stock Values in the Aftermath of the 1989 California Earthquake. The Journal of Risk and Insurance, 59(3), 476–488.
からとったものであるが、一般の人たちが日常で使われる言葉のようだ。日本語で言えば、昔から大阪商人が言ってきた「損して得する」とでも言うべきだろう。
起きることが稀、つまり確率が非常に小さいが、起きたならば甚大に被害が生じる「大災害」は、多くの人は普通の生活でほとんど気にしない。それにどう対処することは日常気にしない。従って、大震災に備えて保険を買うということはしない人が多い。特に若いひとはそうだ。
ところがひとたび、東日本大震災や上の論文のテーマである1989年のカリフォニア地震(日本人の感覚から言うと大震災ではない、ちょっと規模の大きな地震)が起きると、リスク認識の程度があがり保険を買おうとする。保険需要がたかまる。
東日本大震災のときもそうであったが、大震災が起きると、他の産業同様、保険会社の株は売られる。震災に伴い巨額の保険金の支払いをしなければならいことは誰でもわかるから、とにかく損害保険会社の株を売ろうということになる。しかし、賢い投資家は、無視されきた地震の起きる確率を、今度は、過大に見積もっる人が、保険会社や代理店に殺到することを見込んで、保険会社の株の買いを始める。売られすぎた保険会社の株をみて、買い時だ!ということもあるかもしれない。
今回のコロナショックでは何がおきたか?
上のShelor, Anderson, and Cross (1992)論文もそうした点を実証分析でたしかめている。今回のコロナショックでは同様なことは起きただろうか?
少なくとも、日本の保険会社(第1生命を除いて非上場企業)は、興味深いマーケティング戦略を考えた。
生命保険契約には特約という条項がある。例えば、特定の原因で死亡したひとには、保険金の支払い額を増やす「災害割増特約」というのがある。
日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命やかんぽ生命は、今回、新型コロナウィルスによって死亡したひとには、死亡保険金の割り増しをするとした。かんぽ生命は2倍の保険金を支払うそうだ。
「事故が起きてから保険は買えない」ということが、アメリカ人はよく言う。日本人や中国人の感覚からすると「覆水盆に返らず」とおなじいみである。
今回保険会社は「事故が起きたらもっと保険金をはらう」としたわけだ。
若い人に生命保険離れが起きている。そうした人たちにも、生命保険の重要性を、身銭を切って、アッピールした(ファイナンス理論から言えば「シグナルを送ったシグナリング効果」を発揮したのである)。
「損して得する」という大阪商人の商売意気がうまく行くことを地にいったのである。
尤も、イタリア、フランス、スペイン、アメリカなど多数のコロナウィルスによる死亡が既に生じている国では、こうした事ことは検討課題になっていないようである。むしろ、此等の国の生命保険会社が出す生命保険最保険料は急激にあがっている。
日本の生命保険会社は、関東大震災、伊勢湾台風などと同じ規模の大災害が今日起きても、生命保険金の支払いは十分行えるだけの危険準備金を積んでいるはずである。昨日(2020年4月22日)で300人くらいの新型コロナで死亡した人に、倍の生命保険金をはらうことなどは全く痛くないはずである。
実に賢いマーケティング戦略である。株価も当然上がるだろうか?
が生保にとってむしろ問題なのは、バランスシートの負債(保険金支払)側でなく資産側なのだ
。
契約者から預かった保険料の多くは、金融資産に投資をしている。株ばかりでなく、安全資産と思われいる各国の国債も値下りしているのである。
「Gain from loss」という言葉は、次の論文
Shelor, R. M., Anderson, D. C., & Cross, M. L. (1992). Gaining from Loss: Property-Liability Insurer Stock Values in the Aftermath of the 1989 California Earthquake. The Journal of Risk and Insurance, 59(3), 476–488.
からとったものであるが、一般の人たちが日常で使われる言葉のようだ。日本語で言えば、昔から大阪商人が言ってきた「損して得する」とでも言うべきだろう。
起きることが稀、つまり確率が非常に小さいが、起きたならば甚大に被害が生じる「大災害」は、多くの人は普通の生活でほとんど気にしない。それにどう対処することは日常気にしない。従って、大震災に備えて保険を買うということはしない人が多い。特に若いひとはそうだ。
ところがひとたび、東日本大震災や上の論文のテーマである1989年のカリフォニア地震(日本人の感覚から言うと大震災ではない、ちょっと規模の大きな地震)が起きると、リスク認識の程度があがり保険を買おうとする。保険需要がたかまる。
東日本大震災のときもそうであったが、大震災が起きると、他の産業同様、保険会社の株は売られる。震災に伴い巨額の保険金の支払いをしなければならいことは誰でもわかるから、とにかく損害保険会社の株を売ろうということになる。しかし、賢い投資家は、無視されきた地震の起きる確率を、今度は、過大に見積もっる人が、保険会社や代理店に殺到することを見込んで、保険会社の株の買いを始める。売られすぎた保険会社の株をみて、買い時だ!ということもあるかもしれない。
今回のコロナショックでは何がおきたか?
上のShelor, Anderson, and Cross (1992)論文もそうした点を実証分析でたしかめている。今回のコロナショックでは同様なことは起きただろうか?
少なくとも、日本の保険会社(第1生命を除いて非上場企業)は、興味深いマーケティング戦略を考えた。
生命保険契約には特約という条項がある。例えば、特定の原因で死亡したひとには、保険金の支払い額を増やす「災害割増特約」というのがある。
日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命やかんぽ生命は、今回、新型コロナウィルスによって死亡したひとには、死亡保険金の割り増しをするとした。かんぽ生命は2倍の保険金を支払うそうだ。
「事故が起きてから保険は買えない」ということが、アメリカ人はよく言う。日本人や中国人の感覚からすると「覆水盆に返らず」とおなじいみである。
今回保険会社は「事故が起きたらもっと保険金をはらう」としたわけだ。
若い人に生命保険離れが起きている。そうした人たちにも、生命保険の重要性を、身銭を切って、アッピールした(ファイナンス理論から言えば「シグナルを送ったシグナリング効果」を発揮したのである)。
「損して得する」という大阪商人の商売意気がうまく行くことを地にいったのである。
尤も、イタリア、フランス、スペイン、アメリカなど多数のコロナウィルスによる死亡が既に生じている国では、こうした事ことは検討課題になっていないようである。むしろ、此等の国の生命保険会社が出す生命保険最保険料は急激にあがっている。
日本の生命保険会社は、関東大震災、伊勢湾台風などと同じ規模の大災害が今日起きても、生命保険金の支払いは十分行えるだけの危険準備金を積んでいるはずである。昨日(2020年4月22日)で300人くらいの新型コロナで死亡した人に、倍の生命保険金をはらうことなどは全く痛くないはずである。
実に賢いマーケティング戦略である。株価も当然上がるだろうか?
が生保にとってむしろ問題なのは、バランスシートの負債(保険金支払)側でなく資産側なのだ
。
契約者から預かった保険料の多くは、金融資産に投資をしている。株ばかりでなく、安全資産と思われいる各国の国債も値下りしているのである。
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